鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!

    2009年12月

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     和歌山の八幡前駅に着いたらすっかり日が暮れていた。
     通勤帰りの雑踏で、誰かがつまずき玉突きになる。
     ボクは前の人に頭を打ち、背中に後の人がぶつかった。直ぐにスイマセンと言って散っていく人々。ここで終わればよくある話。

     だが、ボクの後ろの人が肩をつかんで離さない。
     そのつかみ方が尋常でなく、あのぅ、と振り向いたら女性らしい。そして、杖が見えた。

    「このままでいいですか」と声が若い。
     ボクは事態を察知し「え、ええ・・いいですよ」と答えた。

    「すいません」と彼女。
    「じゃあ歩きますよ」とボク。
     彼女はボクの肩を強くつかんだままだ。正直困ったなと思った。

     家は同じ方向らしい。ボクらは暗い道を歩速半分以下でぎこちなく歩いた。
     問わず語りで彼女がしゃべる。

     生まれつき全盲で二十歳。JR和歌山駅の近くにマッサージの会社があって、同じような方達とそこに住み、今日は週1の帰宅の日だという。
     1人で帰るのは初めてで、親が許してくれず相当やり合ったと笑うが、ボクは笑えなかった。

     ボクも1人でやってみたいと我を張ることがある。そして実際が思惑通りでなかったということもある。それが今の彼女だろうか。
     話すだけなら普通の女の子。

    「じゃあ花の色とかも?」と訊いて、シマッタと思ったが、「ええ全然、でも形や匂いはわかりますわ」と屈託無く彼女。花を愛でる姿を想像すると胸が詰まる。

     ボクは彼女に比べ、どれほど自由かしれない。
     ボクは彼女をは計り知れない。彼女もボクをは理解できない。

     人間誰でも、内に多かれ少なかれ苦しみや悩みを抱えている。与えられた境遇をちゃんと引き受け、ぎりぎりの所で精一杯生きていく。その点においてはボクも彼女にも径庭はあるまい。

     2時間半もかけて大阪に通勤しているボクに彼女が驚く。
    「大変ですね」と気遣われ「えっ・・・ああ」と今度はボクが驚いた。

    「でも、がんばってくださいね」
    「はい」
     と謙虚にボクは答えた。

    「あらキンモクセイが咲きましたわね」と彼女がつかんだ手を緩める。
     見上げると大きな木。確かにこのフルーティな匂いはキンモクセイだ。

     キンモクセイは鮎の終わりを告げる花。もうこんな季節になっていたのか、とボクは彼女から教えられた思いがした。
     彼女はまたボクの肩をギュッと握ると、仕事と生活で独立するのが夢だと語った。

     どれほど歩いたろう。前方の路地に女性が立っていた。
     その子の名前を呼びながら駆け寄ってくる女性。口元を押さえて申し訳なさそうに礼を言うその声がかすれている。

     女性が彼女の手を取った時、ボクは初めて彼女と正対した。
     凜と屹立する彼女。くぼんだ目はかたく閉じられている。
     ボクが「じゃあ」と手を挙げて去ろうとすると彼女は「ありがとう」と満面の笑顔をつくった。

     その時、何故か・・・、何故だか急にすがすがしくなって、ボクは、振り返りもせず家路への暗道へと足を進めた。

     

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     ある出張の帰りに新横浜から新幹線に乗った。
     発車してしばらくしたとき車掌さんがボクの乗ってる車両に駆けつけた。

     やおらボクの斜め前の前列でしゃがみ込んでなにやらごそごそやり始める。
     キャーと言う女性の悲鳴。立ち上がるおじさん。
     周辺のみんなも何事かと立ち上がってその様子を見る。

     車掌さんは腰を屈めて「あっ、こら、いてぇ、ちょっとー」とか座席の下の方に手を突っ込んでいる。
    「写真撮っとけ」と乗客の笑い声。

     真っ赤な顔をしてやっと立ち上がった車掌さんの手に持っているものを見てみんな絶句した。

     亀だ!しかもデカイ目
     大鍋のふたほどの大きさの甲羅にグロテスクな曼荼羅模様の顔や手がうごめいている。

     な、何で新幹線に亀?
     ボクも他の乗客も目が点になった。

     車掌さんは顔を背けながら両手でしっかりと甲羅を持って駆け去って行った。
     しばらく乗客のどよめきがおさまらない。

     落ち着きをとり戻したボクは、ふっ、おもしろいこともあるものだなと缶ビールを開けた。

     一口含むと、きっと誰かの持ち込んだペットが逃げ出したんだろう、と小さくひとり言を言って柿の種をかじった。

     二口、三口とビールがウマイ。

     んん、でもまてよ・・・とさっきの亀のことが頭から離れない。

     うん ひょっとしたら亀さんの足ではとうてい間に合わない用事が西の方であって、自ら新幹線に乗った可能性もあるんじゃないのか。ボクが一日千里を駆けたい夜があるように・・・・んなわけないか。

     と、これまた小さくひとり言を言ってにやついたべーっだ!





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     今日から土日と高知に行ってきます。
     それは親友のケンちゃんと会うからです。
     なんせ40数年ぶりだからな。
     ワクワクドキドキだよ。
     再掲ですが「親友」読んでくださいかお



    「親友」  

     小学一年生の頃の記憶というとわずかしかない。
     その全てがケンちゃんという近所の同級生とのことである。

     ボクらはいつも二人でいた・・・らしい。
     ケンちゃんは小学二年にあがる春、突然転校した。
     転校後、ボクらはしばらく手紙のやりとりをした。

     ボクは成人した今もケンちゃんをフルネームで覚えている。
     だが、もう会える機会は一生ないだろうと思っていた。

     なんと、そのケンちゃんと40数年ぶりに連絡が取れた。

     今年の連休、ケンちゃんがボクの故郷を訪れた際にボクの名前をはたと思い出し、村の人に訊いてボクの家を訪れたらしい。もちろんボクはいない。たまたま両親も出はからっていなかった。

     残されたケンちゃんの電話番号。
     ボクは言いようのない気持ちでケンちゃんに電話した。 大人の男の声。

     ボクは一声から「ケンちゃんか」と言った。すぐに気がつき喜ぶケンちゃん。

     ボクはケンちゃんとの記憶を話した。驚くケンちゃん。逆にケンちゃんの記憶を聞かされ驚くボク。
     ボクはケンちゃんにボクの一番大切なミニカーをあげたらしい。覚えてない、覚えてないけどうれしいよ!

     離れてから、全然違うところで流れた40数年間の人生が風塵のように舞い去る。
     小学一年生のボクとケンちゃんはタイムマシンに乗った。
     そして、2009年の大人になった世界に来た。

    「今度ケンちゃんどこかで会うかい」
    「うんそうしよう。絶対会おう」
     神戸と神奈川などたいした距離ではない。

     再会したら二人でまたタイムマシンに乗ろう。
     そして、今度は・・・。
     今度は二人で1966年の小学校一年生の世界に戻るんだ。
     なぁ、ケンちゃん。


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     失笑をかった12月9日の「携帯電話」記事以外に、もう一つ携帯電話でへまをやらかしている。
     鮎釣りの帰りの事だ。

     ビールを冷やしていなかったことに気づき家内の携帯に連絡を取った。呼び出しても出ない。ならば自宅固定電話に。これも出ない。ならば、長男は家にいるはずと、長男の登録を押した。ところが、長男ではなく家内が出た。
     ちょうどよかったワ。

    「オレやけど、ビール冷やしといて」
    「はぁ?」

    「はぁじゃないって、もうビール冷蔵庫にないやろ。箱から取って4、5本冷やしといてや」
    「なぁ・ん?」

    「あら・・・・・・もしかして・・・・・・あんたオレの嫁とちやう?」
    「ちがうわぁ!」ブチンッ!

    「・・・・・・」えっ
     はて? ちがうわぁって、今叫んだの誰?

     帰って家内に話すと、長男の番号を間違えて登録していた。
     考えてみれば、長男には一度も電話をしたことがなくこのときが初めてだった。

     そりゃあ怒るわなあ。全然知らん人からいきなり電話掛かってきて、ビール冷やしといてなんて言われたら。

     だが、話がこれで終わらないのがガバチャたる所以だ。
     登録変更の仕方がわからず、その電話番号はそのままなおざりにされた。
     そしてその後、同じパターンの電話をその同じ人に2回もしてしまったのだ。

     3回目には「またあなたですかぁ!ドンッ」との開始で、きつ~い連打を食らってノックアウト。けんもほろろに詫びを入れ、今から直ちに登録し直します、と電話を切った叫び

     いやホンマに、電話の主様その節はスイマセンでした。
     この場を借りてとんとお詫び申し上げます。





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     瀬に立ち込んで鮎釣りをしていると、川のせせらぎしか耳に入らず夢中になることがある。有田川の明恵の瀬で鮎を釣っていた時のこと。

     なかなか釣れなかったが、一匹釣れてから調子よく上がりだした。夢中になっていたら川のせせらぎより大きく、ウ~ウ~とサイレンが鳴る。続いて「どこそこの竹藪から火が出ました」との放送が響いた。

     どこそこのが聞こえなかったが、竹藪かと暢気に釣りを続けていた。
     橋の上に何人かの人が来てボクの方を見ている ボクは有頂天になって、見たかという感じでカッコ良く竿を繰った。

     と、背後でかすかにぱちぱちと音がする。後ろにもギャラリーが来て拍手までくれたかと、ボクはナルシスト冥利にひたっていた。

     遠くでチンチンと消防車の音が聞こえはじめ、その音がだんだん大きくなって橋のたもとで止まった。どさどさどさと消防士らがホースを持って河原に降りてくる。

     なんだと思って振り向いたら、ボクの後ろの竹藪が燃えていた。
     どっしぇー、こ、ここかいなっえっ

     いつの間にか橋の上は野次馬で一杯だ。幸い火事は鎮火したが、今度はボクの顔に火がついた。
     望外のワンマンショー。

     野次馬と消防士に囲まれて、9メートルもの長竿を突っ立てて固まる釣りバカにみんなの視線が集中する。
     山川草木にまで見つめられてるような感じで、いたたまれなくなったボクは帽子のつばを深く降ろし、ゼンマイ仕掛けのようにぎこちなく回って背を向けたガーン

     野次馬らの散るのを待つしかない。 

     やがて喧噪は収まったが、今度は鮎が釣れなくなった。
     くしょ~、と今朝のめざましテレビを思い出した。

    「今日最も悪い運勢はふたご座のあなたです。ラッキーポイントは赤色のネクタイ」って、アヤパン! 今日赤ネクタイしてたらもっと笑われてますからっむっ




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