鮎釣り師らしく「ええ、天竜川で巨鮎と格闘して折っちまいましてね」
 などと豪快にうそぶく事もできぬ冬、あばら骨を痛めたことがある。

 神戸出張でしこたま飲んだ翌朝のホテル浴室でのこと。
 二日酔いでぼーっとシャワーを浴びていたら、湯がちょっとぬるかったので蛇口をチョイとひねった。

 と、いきなりシャワーが熱湯に!メラメラ
 ゥワヂャ~と目をむいて体をびちらせ湯船から脱出しようとしたら、ジャンプ力が足らずつま先が湯船の縁に引っかかり、そこを支点に洋式便器に胸から激突した。

 息が止まったドクロ
 丸裸で悶絶。
 死ぬ時も生まれたままの姿だなんて、自分らしい最期だけどちょっと恥ずかしいぜと走馬燈のように40年の人生が脳裏を駆けた。
 生んでくれてお母さんありがとう、と心の中で言ったら息がつながった。

 チュルルルとけたたましい電話のベル。
 床に爪を立てて丸裸ではいずって受話器を取る。

 「お客様、火災報知器が点灯してますが大丈夫ですか」とフロント。
 「べ・ぇ~、ちょっど、じゃわーのゆげが、べやに・・・・・・」
 満身で声を絞りなんとかやり過ごした。が、たぶんゾンビみたいに白目だけになっていたと思う。

 丸裸で布団に潜りチェックアウトぎりぎりまであばら骨をさすって耐えた。
 帰り、フロントで「お客さま大丈夫でしたか」と再び聞かれたが「べ・ぇ~」としか答えられなかった。

 医者に直行。
 あばら骨にひびが入っていた。
 治るまで笑う度にあばらを押さえてヒーヒー悲鳴を上げた。
 
 人生には坂が三つあるという。
 上り坂、下り坂、そして三つ目のさかがまさかだと。
 こんなうまいことを言ったのが誰だったかは覚えていないが、オフに下手をうつと鮎釣り師は何の言い訳もきかないという教訓を、まさかシャワーから教えられるとは夢にも思わなかった



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