古来より熊野詣として親しまれてきた和歌山最果ての地に、鮎釣り師の心をつかんでやまないマドンナさんという女神がいる。
 ボクの自宅から130キロメートルもの遠方。

 ボロロンボロロ~ンとうなるダイハツムーブのエグゾーストノート(排気音)が、まるでマドンナさんを恋しがっているようでもある。
 てな感じで、二枚目のふりしてマドンナさんのもとに到着。

 別に三時間かけて散髪に来たんじゃない。
 ここが、谷口おとり店。

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 「あら、ガバチャ」
 と、さっそくマドンナさんのマシンガントークに射抜かれ、危うく鮎釣りに来たことを忘れかかっていた。
 ら、ガバッといけすの蓋が開いた。

 デ、デカッ、このいけす。
 ボクがそのまま泳げるって。

 おとり鮎のことを「友」という。
 これから、ガバチャに鼻カンを通され荒瀬で引き回される「友」は、この大きないけすの中で待っていた。

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 去年はマドンナさんの手の写真が掲載されただけでアクセス数が200アップした。
 今年はこの写真でアクセス数400アップは間違いなし。

「たくさん釣ったらこの冷凍庫でカチンコチンにしてあげるから」
 とマドンナさんの妖艶な眼差し。

 なるへそ、一泊の釣り客にはありがたい冷凍スペシャルサービス。名付けて「マドンナのカチンコスペシャル」を受けたいおっちゃんは、嫁はんを・・イヤ、古着を質に入れても谷口おとり店に直行すべし。

 ただし一匹も釣れなかったら、散髪屋さんだけにバリカンで丸ボウズにされる可能性もありなのだが・・・。

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 日本昔話にでも出てきそうな、熊野川支流の四村川の風情。
「ばっさま、おらぁー鮎が釣りてえだぁ」

 と、すかし声でひとりモノマネをやったら、突然たたきつけるようなスコールに打たれて退散~。

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 さらに上流に移動。
 眼下にアメ色の岩盤発見。

 おおっ、きらりきらりと良型が腹を返しているド。
 よだれ垂らして、突撃ラッパのパンパカパーン。

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 腰まで浸かって竿を伸ばし、グイグイッと岩盤におとり鮎をはわせたらいきなりゴン、ギューンッだ。
 鮎竿が一瞬で上弦の月に弧を描いた。

 腰を落として瀬を探る。
 ええいっ切れるがままよ、と強引に抜いたらドスンとタモ網の底に飛び込んできた。

 見ると、背びれの伸びたナイス美鮎。
 よーしっ、と大宇宙のどん底で全細胞が跳躍モードに突入だ。

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 ところが、その後アタリが続かずポロリポロリと涙鮎。
 最後は木の枝に絡んで仕掛けも鮎もボロボロに。

 結局昼から3時間も粘って5匹でした。

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 ずぶ濡れで川から上がると店のおばあちゃんが「どうでしたか」と訊く。
 ボクは「五匹でした」というかわりに「夕食にでもどうぞ」と釣った鮎を差し出した。

 「ええんですか、せっかく釣ったのにいただいて」
 と眼を細めるおばあちゃん。
 
 「あの、せめてお名前だけでも」
 「いや、自分はただの旅の通りすがりですから」

  と、高倉健さんのような渋いやりとりは・・・・、全くなかった。
  家の奥に消えたおばあちゃん、直ぐにニコニコ顔でお皿を持って現れる。

 ま、一日一善だよ。と、ちょいと清々しい気分になって店を後に。
 おなかが鳴ったので、また日本昔話調で「ばっさま、おらぁ腹がへっただぁ」とやったらたたきつけるようなスコールが落ちてきた。

 このモノマネは、天に受けが悪い。

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 さて、どうするか。
 疲労こんぱいで和歌山まで帰る気力もない。

 このままバスに乗ってどこか温泉にでも行きたい気分。
 う~ん、砕かれし夢のかけらを拾い集め、鮎釣り師はまた顔を上げる、と。

 よし、今日は泊まろう。
 マドンナさんの近くで宿をとって、明日リベンジして帰ろう。

 そう決めたら、なぜか突然雨が上がった。

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 マドンナさんのいる谷口おとり店はこちら。

より大きな地図で 谷口おとり店 を表示

 で、明日につづく。
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