1月の下旬に大阪湾の生態系を考えるフォーラムがあった。
 ここで、この冬は大阪湾も例年より水温が低いということがデータとしてはっきりと示された。

 その要因は黒潮の大蛇行によるものだ。

 昨年の秋ごろから黒潮が日本列島から遠ざかり、高知から静岡のあたりまでは海水温の低下が確認されている。

 この大蛇行は十数年のレンジで起こりしばらくは元には戻らない。
 そして、生態系にも大きな変化をもたらす。

 例えば、2月下旬に解禁された大阪湾のイカナゴ漁は
 一昨年の47トンから、今年は現在までに107トンとこの調子でいくと三倍増となる予測だ。

キャプチ78



 ガバチャはこの話を聞いて
「今年は鮎も太平洋側は豊漁ではないか」
 と口元をほころばせた。


 2月に入って、とある紀南通の釣り仲間からガバチャのもとに嬉しき便りが届いた。
「今年の鮎の遡上はスゴイですよ」
 とのことだ。
 それは現地の事実に基づく具体的な情報だった。

 よっしゃーっ!

 高い水温の黒潮が遠ざかることによって日本列島の水際近くの海水温は低くなる。
 以前、ガバチャが記事にした
「稚鮎は海水温が高いと耐塩性を失いその多くが死滅してしまう」
 は今年は免れたのだろう。


 そしてもうひとつ。
 今年の冬の寒さがあげられる。

 冬の海の潮は夜中に引く。
 その潮の引いた時にとりわけ冷たい空気が水面に触れれば、更に水温は低くなる。

 稚鮎のゆりかごと呼ばれる浅場は低い温度のままだったはずだ。
 このせいで、例年なら稚鮎をパクパク食べてしまう浮き魚も少なかったのではないだろうか。

 

 つまり、今年は「黒潮の大蛇行」と「低気温」によるダブルインパクトで、
 昨年11月に生まれたいわゆる「早生まれの鮎」が例年になくたくさん生き延びたと想像される。
 これが大きくなって現在大挙して遡上してきているのではないだろうか。

 だが、このガバチャの仮説が当たっていたとしても
 釣り人的には単純には喜べない状況だとも思う。

 それは、これから「遅生まれのチビ鮎」も大挙して遡上してくるはずなのだ。

 このチビ鮎と今遡上中の大量の良型鮎が川でゴッチャ群れとなり
 絶対量が増えれば個体の成長は鈍化するだろう。

 このような時にこそダム上にダム下の天然遡上鮎をくみ上げて移送放流すればよいのに
 と思ったりもするのだが。

 とにかく自然界は我々の都合どおりには進まない。
 その川の健康状態や解禁後の豪雨、冷水病など後発のリスクもたくさんある。
 毎年フタを開けてみなければわからないのがこの鮎のことではある。


 それでもガバチャは今年に期待する。
 天然遡上鮎の川は、解禁当初から中流域より上手でもかなり良い釣りができるのではないだろうか。


 あの川のあの場所で……。
 と、天然遡上のズガガーンッという強烈な当たりや引きを思い浮かべただけでも
 体がワクワク宙に浮く気持ちになる。


 早くこいこい解禁日!
 そして、晩秋には ドカンピュ! と叫ばせてくれ。