鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!

    ガバチャのエッセイ

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     有田川のアマゴ釣りの解禁の日に私はトバシを見た。

     それは競り立った木々に囲まれた高い空の真ん中にポツンと浮かんでいた。

     

     トバシとは山から切り出した原木をある程度の長さに切りそろえて、その何本かをワイヤーで束ねて吊り下げ、木材を運搬するトラックの待つところまで空中移動させる装置のことである。

     私の故郷の高知ではそれをトバシと呼んでいた。

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     私がこのトバシを初めて見たのは2歳半ぐらいの時で、記憶史の一番最初に現れる。

     

     私は草に覆われた山道で母に背負われていた。

     と、首の後ろにチクッとした痛みを感じる。

     

     母は私を降ろして首の後ろを見ると

    「ダニや」と驚いて取ってくれた。

     

     私は取るときに怖くて泣いたのを覚えている。

     泣き止まない私に母は気を紛らわせるように

     

    「ほらトバシぞね」

     と言って山頂の方を指さした。

     

     見上げると高い空を材木の束が一定の速度で移動していた。

     その装置を動かしていたのが父の仕事だったらしい。

     

     二歳半というとちょうど今私の孫が同じ年齢である。

     こんな小さなときに……と私は孫を覗き込んだ。

     あどけない顔が返ってくる。

     

     孫の一番最初の記憶には何が残るのだろうか。

     

     もしも私だったら

     孫の記憶の中だけのことだとはいえ

     一番長く一緒に居られるような気がしてなんとなく嬉しい。

     

     そんなことを考えている自分は暇なのか、老いたのか……

     そろそろ鮎の準備でも始めましょう。

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     幼なじみのT男とR子が結婚した。
     ボクらは高知の山村のわずか24人のクラスだった。
     結婚したのが昨年なので、50歳を過ぎて幼なじみ同士が結ばれたことになる。

     この二人は小学生の頃からカップルだった。
     きっかけはボクが冷やかして言いふらしただけのことなのだが。

     中学を卒業するまで二人には何事もなかった、ようだ。
     でも、意識をしあっていたのは間違いない。
     ことある毎に、ボクやみんなから冷やかされて赤面していた。

     高校に上がると、二人は離ればなれになった。
     成人すると二人ともそれぞれの家庭を持ち、違う人生を歩んだ。

     ここまでなら、どこにでもある話。

     ところが、数年前の同窓会で異変が起こった。
     T男がみんなの前ではばかることなく「離婚した」と言う。
     すると、R子も「実はあたしも離婚してたの」と言う。

    「昔のカップル同士独身になったんなら、いっそ結婚したらどうだ」
     と、ボクの冷やかしにみんながドッと沸く。

     これが現実となった。

     自分にもある初恋の思い出。
     いくつになっても色あせることのない想いにこの二人、どこでどう弾みがついたのか。
     ゲスの勘ぐりのとどく範疇ではない。
     スピード感のありすぎる世の中で、普遍的な心情が数十年もの歳月を経て結ばれた奇跡を心から喜びたい。

     それにしても、人生とはわからないものである。
     そして、人生とは自分で切り開こうと思えばどうにかなるものなのかもしれない、とも思った。

     先週末、高知に帰郷して友人らと飲んだ。
     T男とR子は、清流の傍らに小さな新居を構えて幸せに暮らしているという。

     最近はT男とR子が仲良く竿を伸ばして鮎を釣っているらしい。
     鮎釣り師のボクらと違って、二人だけがその晩食べる鮎が釣れたらいい。
     春には山菜を採り、秋には満天の星空を眺め、冬にはこたつに丸まって・・・・・・爛熟の時間をしっかりと紡ぎ綯ってもらいたい。

     結婚報告の際、R子がはにかみながらボクに言った言葉が胸を突く。
    「あたし絶対に幸せになるから」

     二人の結婚はボクの小学生の時の冷やかしから始まったのだ。
     絶対に幸せになってもらわなくては、困る。

     






















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     鮎釣りの解禁日に強い風が吹いた。
     河原へと降りるあぜ道で、ふと雑草の中にまみれた小さな花が目にとまる。

     いつもなら気にもとめない花なのに、なぜか鮮やかに見えた。
     強い風が吹かなければ目にはとまらなかっただろう。

     花にとっては化外(けがい)の地ともいえるスケール。
     なのに、風のざわめきを楽しんでいるかのように誇らしげに揺れている。
     たじろぐことなく、ちゃんと春を知って凛と咲く姿に一瞬心がほころんだ。

     3.11以降、どこか違う世界に生きているような感覚を覚えていた。
     塞ぎ込んだままでは心配をかける人がいる。
     楽しくしていれば安心してくれる人がいる。

     ぼんやりとした煩悶の中、できることから少しずつちゃんとやっていこう、と前を向いたばかりだった。

     大げさかもしれない。
     がしかし、この草花が「生とは何か」をいみじくも問いかけているように思えた。
     果たして、使命感とは単なる本能なのだろうか。
     ないまぜな悲喜に向き合い続けているのは人間だけとは限らないのではないのか。

     自分らしさを取り戻してみよう。
     そう思って、釣り竿を肩にあぜ道を駆け下りた。

     腰を落として早瀬を渡ると、にわかに風が緩む。
     若鮎のライズが冷たい水をはじいた。

     川面には春というよりかはむしろ初夏に近い匂いが立ちこめている。
     ボクは石裏のよどみに脹ら脛まで浸かると、新緑に競り囲まれた狭谷を見上げ鮎竿をゆっくりと伸ばしていった。

     今日はおもいっきり釣ってやるぞ、と。


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     和歌山で勤めていた時、職場のフェンスに暴走族風の車がつっこんだ。
     警察が来て「てきゃ、てきゃ」と現場検証をする。

     敵ゃ、とはかなり敵対してるなと思ったら「てきゃ」は「彼」と言う意味の三人称単数であった。
     和歌山の彼は敵味方関係なく「てきゃ」である。

     仕事で現場監督に出ると、いかつい土木作業員が仕上がったコンクリートの壁を見て「美しい」とだみ声を上げる。

     仕事が終わって、汚れた長靴をタワシで洗ってもひげ面のおっさんらは「美しい」とだみ声を連発する。
     美しいの適応範囲が広く違和感を持ったが、これが最上級になると「がいに」が付く。

    「がいに、美しいやして~」とスナックで和服のママさんがカウンターの隅に置かれた花束をうっとり愛でる。
     最上級は微妙~だと思った。

     職場レクでおでんを作っていたら空だきになるほど煮すぎてしまった。
     先輩が蓋を取って「あかな、こりゃあ、けつけつにもじけてしもうちゃあら」と水を足す。
     えっ、なに?・?? 

     ぜんぜんはデンデンと発音する。
     職場の女性が相手先に電話がつながらず「デンデン出ん」とぼやく。

     パチンコ屋で「どうや?」と訊いたら「デンデン」とそっけなく答える。
     この場合は「全然」でも「出ん出ん」でも話が通る。

     銅像はドウドウだ。
     もし、堂々たる象の銅像があったら、ドウドウたるドウのドウドウとなる。
     
     「居る」を「ある」と言う。これが一番驚いた。
     在宅の確認を「おとうさんあるか?」「ないわ」とやられる。

     まあいい、明日にでも粗大ゴミに出されそうな自分には和歌山弁で正解だえっ


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     高知に「のうが悪い」と言う言葉がある。
    「具合が悪い」「使い勝手が悪い」と言う意味だ。

     他県には絶対通じない。
     高知のゴルフ場で。折れた傘の柄を持ちにくそうにして一緒にプレーしていた県外人に「おまん、のうが悪いろ」と高知人が言った。

    「君、その傘は使い勝手が悪いだろう」と言う意味だが「君、脳が悪いだろう」と県外人の耳につき刺さった。
     スコアの上がらない県外人がマントヒヒのように赤面してマジ切れたというドンッ

     高知県人は言葉を略さない。
     ちゃんと一つ一つのひらがなを押すように発音する。

     携帯をケータイとは言わない、ケイタイとしっかり発音する。兵隊をヘータイと言わないヘイタイと言う。
     明治になって、丁寧に発音する高知人は政府から認められ国語の先生として東北地方などに赴いたという。

     東北弁は「しかたがないでしょう」を「んがね」、「そうでしょう」を「だす」と言う。極寒だと悠長にしゃべってらんねえ。
     そんな気候が単語ならぬ短語を生み出したのだろう。

     ボクは、端的なのに情緒がすうっと染み入る東北弁が好きだ。
     東北弁に限らずその土地どちの言葉があっていい。標準語など大きなお節介だ。

     なまじ言い方で持ち上げられた高知人は、胸を張って議論好きになったという。
     酒を片手に、犬と猫のどちらが賢いかを朝まで言い争う。

     内容は問題ではない。ありったけの知恵とボキャブラリーを出し尽くすことに意義がある。
     どんなに言い合っても前には太平洋、後ろには四国山脈しかない。

     とことん言い合える条件はそろっている。

     やっぱりガバチャも、そんな高知県人中の高知県人ながやと思うがぜすにひひチョキ


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