鮎釣り師ガバチャのひとり言

釣りあげた鮎で仲間と酒を飲む   これ人生のユートピア!

    ガバチャのエッセイ

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     ボクに鮎釣りを教えてくれたおじいさんが逝って15年になる。

     最初、瀬で鮎竿を持たされ「掛っちゃあせんか」と言われ、上げたらピンピロとチビ鮎2匹が上がってきた。竿も重くこれはおもしろくない釣りだと続けなかった。

     ところがある日、川で子供らに水浴びをさせていたら、鮎釣り師が横に来て次々と鮎を掛ける。それも瀬でなく鏡のような水面でだ。

    「これは何ですか」と訊いてボクは鮎の泳がせ釣りを知った。
     長竿を自由自在に操って、次々とおとり鮎と野鮎をケンカさせて掛ける魔法の釣法。
     その日から泳がせ釣りが気になってしかたがないボクは、おじいさんに弟子入りし気がついたら鮎狂いの世捨て人になっていた。

     かの偉いニュートンさんは、地球上の物理現象を方程式で全て解きあかした。
     が「そもそも地球はなぜ回り始めたのですか?」と訊かれて困窮したという。

     ニュートンのやっと答えたコメントは「まず最初は神様が動かしました」でした。
     いわゆる神の一撃てやつです。

     夢の途中を彷徨う人にそもそもはなんだったんだと聞かれても困る。
     いろんなきっかけがあまたのごとくかすり去っていく世の中で、なぜ鮎だったのかと訊かれても答えようがない。

     泳がせ釣りのインパクトによって突然目覚めたDNA。これも神の一撃なのか。ボクの日常はありきたりの方程式では解き明かせないぐらいの複雑系に翻弄されている。
     
     だが、釣りだけに限らぬ、ある一撃らが、ボクの人生の一節一節(ひとふしひとふし)をつくってきたことだけは確かだドンッ





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     和歌山の八幡前駅に着いたらすっかり日が暮れていた。
     通勤帰りの雑踏で、誰かがつまずき玉突きになる。
     ボクは前の人に頭を打ち、背中に後の人がぶつかった。直ぐにスイマセンと言って散っていく人々。ここで終わればよくある話。

     だが、ボクの後ろの人が肩をつかんで離さない。
     そのつかみ方が尋常でなく、あのぅ、と振り向いたら女性らしい。そして、杖が見えた。

    「このままでいいですか」と声が若い。
     ボクは事態を察知し「え、ええ・・いいですよ」と答えた。

    「すいません」と彼女。
    「じゃあ歩きますよ」とボク。
     彼女はボクの肩を強くつかんだままだ。正直困ったなと思った。

     家は同じ方向らしい。ボクらは暗い道を歩速半分以下でぎこちなく歩いた。
     問わず語りで彼女がしゃべる。

     生まれつき全盲で二十歳。JR和歌山駅の近くにマッサージの会社があって、同じような方達とそこに住み、今日は週1の帰宅の日だという。
     1人で帰るのは初めてで、親が許してくれず相当やり合ったと笑うが、ボクは笑えなかった。

     ボクも1人でやってみたいと我を張ることがある。そして実際が思惑通りでなかったということもある。それが今の彼女だろうか。
     話すだけなら普通の女の子。

    「じゃあ花の色とかも?」と訊いて、シマッタと思ったが、「ええ全然、でも形や匂いはわかりますわ」と屈託無く彼女。花を愛でる姿を想像すると胸が詰まる。

     ボクは彼女に比べ、どれほど自由かしれない。
     ボクは彼女をは計り知れない。彼女もボクをは理解できない。

     人間誰でも、内に多かれ少なかれ苦しみや悩みを抱えている。与えられた境遇をちゃんと引き受け、ぎりぎりの所で精一杯生きていく。その点においてはボクも彼女にも径庭はあるまい。

     2時間半もかけて大阪に通勤しているボクに彼女が驚く。
    「大変ですね」と気遣われ「えっ・・・ああ」と今度はボクが驚いた。

    「でも、がんばってくださいね」
    「はい」
     と謙虚にボクは答えた。

    「あらキンモクセイが咲きましたわね」と彼女がつかんだ手を緩める。
     見上げると大きな木。確かにこのフルーティな匂いはキンモクセイだ。

     キンモクセイは鮎の終わりを告げる花。もうこんな季節になっていたのか、とボクは彼女から教えられた思いがした。
     彼女はまたボクの肩をギュッと握ると、仕事と生活で独立するのが夢だと語った。

     どれほど歩いたろう。前方の路地に女性が立っていた。
     その子の名前を呼びながら駆け寄ってくる女性。口元を押さえて申し訳なさそうに礼を言うその声がかすれている。

     女性が彼女の手を取った時、ボクは初めて彼女と正対した。
     凜と屹立する彼女。くぼんだ目はかたく閉じられている。
     ボクが「じゃあ」と手を挙げて去ろうとすると彼女は「ありがとう」と満面の笑顔をつくった。

     その時、何故か・・・、何故だか急にすがすがしくなって、ボクは、振り返りもせず家路への暗道へと足を進めた。

     

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     今日から土日と高知に行ってきます。
     それは親友のケンちゃんと会うからです。
     なんせ40数年ぶりだからな。
     ワクワクドキドキだよ。
     再掲ですが「親友」読んでくださいかお



    「親友」  

     小学一年生の頃の記憶というとわずかしかない。
     その全てがケンちゃんという近所の同級生とのことである。

     ボクらはいつも二人でいた・・・らしい。
     ケンちゃんは小学二年にあがる春、突然転校した。
     転校後、ボクらはしばらく手紙のやりとりをした。

     ボクは成人した今もケンちゃんをフルネームで覚えている。
     だが、もう会える機会は一生ないだろうと思っていた。

     なんと、そのケンちゃんと40数年ぶりに連絡が取れた。

     今年の連休、ケンちゃんがボクの故郷を訪れた際にボクの名前をはたと思い出し、村の人に訊いてボクの家を訪れたらしい。もちろんボクはいない。たまたま両親も出はからっていなかった。

     残されたケンちゃんの電話番号。
     ボクは言いようのない気持ちでケンちゃんに電話した。 大人の男の声。

     ボクは一声から「ケンちゃんか」と言った。すぐに気がつき喜ぶケンちゃん。

     ボクはケンちゃんとの記憶を話した。驚くケンちゃん。逆にケンちゃんの記憶を聞かされ驚くボク。
     ボクはケンちゃんにボクの一番大切なミニカーをあげたらしい。覚えてない、覚えてないけどうれしいよ!

     離れてから、全然違うところで流れた40数年間の人生が風塵のように舞い去る。
     小学一年生のボクとケンちゃんはタイムマシンに乗った。
     そして、2009年の大人になった世界に来た。

    「今度ケンちゃんどこかで会うかい」
    「うんそうしよう。絶対会おう」
     神戸と神奈川などたいした距離ではない。

     再会したら二人でまたタイムマシンに乗ろう。
     そして、今度は・・・。
     今度は二人で1966年の小学校一年生の世界に戻るんだ。
     なぁ、ケンちゃん。


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     ボクが幼い頃の夏、キャンプに連れて行ってもらったことがあるお月見

     大人の男ばかり5、6人。みんな水中メガネでパンツ一丁になり、川に潜ってヤスで鮎を捕っていた。夕食が何だったかは覚えていないが、その時やった「鮎の味噌焼き」だけはありありと覚えている。

     まず、平らな石を焚き火の横であぶる。水滴をも一瞬で蒸発させるほどに熱くなったら横倒しにする。その上に惜しげもなく味噌を一袋練りだし丸い土手をつくったらその中に鮎を落とし込む。

     鮎は一瞬で白色し身がほぐれる。立て続けに塩、砂糖、酒、醤油、近くに生えていた行者のニンニクをちぎってぶち込み、箸でかき混ぜる。味噌の焦げた香ばしい匂い、ホクホクの鮎の味噌焼きのできあがりだ。

     ほれ、とおじいさんがボクによそってくれた。
     酒が入るのを見ていたボクは恐る恐るそれを口にした。
     ん、うま~いっ! ボクのリアクションに大人達が笑うラブラブ!
     ボクは夢中で食べた。

     夕餉が盛り上がると、あるおじさんがボクをつかまえて英語を教えるという。
     まんじゅうは「オスト アンデ~ル」と流ちょうに発音。じゃあ「エンピツは」と訊くと「トグト シンデ~ル」だと。

     今、そのおじさんらと同じ年になったボクが、コテコテのオヤジギャグ師になったのは、その時の英才教育のせいではないかと思うのだが。




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     二年前の冬。
     出勤時にローソンに寄ったら写真の雛メジロがドアの前にうずくまっていた目

     触っても動かない。出てきた店員さんも「寒すぎるからかな」と心配顔。
     思案の途にいつか見たドラ猫が思い浮かんだ。おまえ食われるぞ、と車にあったタオルを取り出しメジロをくるんだ。

    「どこか暖かいところに放してあげるわ」と店員さんに言ってメジロを助手席に乗せた。 ヒーター全開、怒鳴るようなケツメイシの音量を絞る。

     でっかい布団から頭だけ出したメジロに「メジ郎」でいいか、と見つめると首をチョイとひねった。

     職場につくと段ボールで巣をこしらえ、コンビニ弁当の具を溶いて離乳食をつくると、陽当たりのよい休養室にメジ郎をおさめ仕事についた。

     やっと昼休み。

     だが、メジ郎はいなかった。
     清掃のおばちゃんに訊くと、メジ郎は元気よく空に舞い上がったとのことだった。

     戸を開けると日向の植木で野鳥らが群れ遊んでいる。まあここならドラ猫もいまい、とメジ郎にお裾分けしたコンビニ弁当を広げた。

     メジ郎、世の中厳しいけど元気でな。


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